プロジェクトヒストリー

日常の中に散らばっている
成功のかけら。
アンテナを高くしてチャンスを掴む

竹村製作所では、社員自らが「やりたい」と行動することを大切にし、さまざまな支援体制を整えています。社員一人一人の前向きな思いがさまざまな製品となり、ヒット商品を生み出してきました。
創業者・竹村敏男が開発した不凍栓によって「竹村といえば不凍栓」と言われるまでになりましたが、2000年以降になると新たな販路・エクステリア業界への挑戦がスタートします。当時を知る社員が大切にしてきたのは、日常の中にある成功のチャンスやヒントを見逃さないこと。さまざまな障壁を乗り越えて社員が団結し、ヒット商品を生み出したストーリーをご紹介します。

品質保証部 部長 小山 孝洋
技術部 研究室長 橋本 信雄
長野支店 係長 田中 秀一
技術部 次長 清水 貞治
※取材当時

エクステリア業界に挑戦し、
新たなヒット商品が生まれた

橋本エクステリア業界への参入を始めたのが2009年、不凍水栓柱ユニット『SANANDO(サナンド)』の開発でした。この製品はエクステリアメーカーA社から要請を受けて技術提携し、製品化しました。『SANANDO』は寒冷地向けの不凍水栓柱ユニットで、飾り蛇口と水受けパンがセットになっているレンガ風の製品です。鋳物で重厚感のある小鳥ハンドルが特徴です。

田中試作1号は立ち面と内筒管が一体型で、とても重く設置しづらい物だったので、一人でも施工ができるようにと、立ち面と内筒管を分離するように提案しました。その他にもボルトの位置や、水抜き・通水サイン等、細部の至るところまでこだわったので、苦労したことを思い出しました。

橋本このように「使う身になって考える」という精神は、創業者の代からの企業理念となっています。

田中そもそも参入のきっかけは、長野市で開催されたエクステリアの展示会に『SANANDO』を出展したことから始まります。後日、主催商社の社長に表敬訪問をしたところ、その商社も加盟しているエクステリアメーカーB社にサプライヤーとして参入しないかと誘われました。当時、私はもちろん会社もエクステリア業界のことを知りませんでしたが、以前から個人的に関心があったので迷いはなく、やってみたい! という気持ちを強く持ちました。そして、そんな私の「やりたい」という思いや行動を会社も汲み取ってくれて、支援していただいたことも大きな後押しになり、参入することになったのです。
B社はエクステリアの商社ネットワークで、全国のさまざまな資材商社が加盟しています。当時はまだ不凍栓などの寒冷地用製品が扱われていなかったこともあり、歓迎されました。
そして大きな転機となったのは、蛇口一体型デザイン水栓柱『ジラーレ(アクアマール※1)』の販売でした。B社参入2年目で、カタログの掲載枠も1/3ページとすごく小さかったのですが、「ジラーレ」はシンプルさと施工性の良さからリピート率が高く、1年目からヒット商品となりました。

橋本『ジラーレ』のアイデアは、B社の開発会議でのアドバイスから生まれました。当時、現在廃番となっている製品の配管構造の説明のために持っていった内筒管にアドバイザーが注目し、「中身のステンレス管が細くてスタイリッシュなので、それを製品化できないか」と言ってきたのです。私たちからすると、普段は隠してしまう中身の配管なので、これでいいのかとキョトンとしてしまいました。
一般的な水栓柱の配管はビニールパイプ製が多く、私たちにとって当たり前に感じていたステンレス配管が、アドバイザーからするとシンプルな美しいフォルムに見えたのでしょう。

田中会議から戻って半信半疑で試作に入りました。発売までの時間がなく、今思えば驚くほどの短期間で完成させました。発売され、数年後には、他社でもスリムタイプの水栓柱が販売されるほどヒットしたんですよ。当時、“ジラーレもどき”という言葉が業界で流行ったくらいです。

機能性はもちろん、
デザイン性、施工性、
カラーリングにもこだわるように

清水ジラーレは、配管そのままのフォルムからスタートしているので、円筒形フォルムを活かして吐水口を360度回転できるようにし、吐水口の角度を15度に上げ、使いやすさとすっきりとした形になるように楕円形にしたのもこだわったポイントです。そして、ステンレスパイプのイメージを残すため、34㎜のステンレス外筒もラインナップに加えました。

田中その後、『ジラーレ』ヒットからスリムタイプの角型蛇口一体型水栓柱を企画しました。でも角型で蛇口一体型はデメリットが多く断念することになりました。そこで、一体型に見えるような蛇口、つなぎ目のないフォルムを提案し、当時業界最多の14色展開というキャッチコピーで売り出しました。それが『アクアルージュ(アクアパステル※2)』でした。

小山カラーリングにもこだわって、水栓柱には珍しいインテリアで用いるようなカラーや、某高級外車のカラーも参考にしたんです。

田中それから、バリエーションやカラーリングを増やし、水栓パン等のオプション品も次々と開発して、売上を飛躍的に伸ばしていきました。

小山当社はそれまで少量多品種を得意としていませんでしたので、少量多品種製品と短納期の体制づくりを、まず製造部としました。その中で、何より一番課題が多かったのは製造現場です。そもそも、製品を作る場所がなく、それを確保するところから始まりました。
営業部にも協力してもらい、当時、スペースが空いていた長野支店倉庫の2階に、組み立てや梱包など仕上げ作業を行う作業場を手作りで造りました。
製造部の管理職の皆さんと、自分の仕事をやりくりしながら「これから仕上げ隊に行ってきます!」なんて言いながらやっていましたよね。しかも、決して強要していないのに。そうしていくうちに、最初こそ売れるのか半信半疑だったのですが、毎日出荷されていく製品を見て、ヒットを実感できるようになっていったのを思い出します。 
製品づくりに携わった製造、営業、技術の3部門のみんなが手を取り合って、同じ方向を見ているという実感がありました。

社員一人一人の
“やりたい”意欲が、未来につながる

田中こうしてふりかえってみると、仕事のチャンスや成功って、日常の中に潜んでいるんだと常々思います。そもそも最初からエクステリア事業に挑戦するぞ! と意気込んで計画をしていたわけではなく、さまざまな人たちとのつながりや協力から新たな販路を見つけることができた。大切なのはきっと、チャンスや成功の素を見逃さずに拾うこと。そして、行動に一歩踏み出す勇気です。

小山そう、行動に移すことが大切。私たちはいま、部下を支える側になったけれど、何かの挑戦や相談に対して否定的なことは言わないよう心がけています。部下がやりたいことには「お金はかかってもいいから、どんどんやってみよう!」と背中を押す。私たちがかつて挑戦をしたときに会社が後押ししてくれたから、同じようにしたいと思うし、そこからまた魅力ある新製品が生まれると信じています。

橋本当時と比べても各部署の知識や経験が蓄えられて、社員一人一人のレベルも上がっている。円熟しているのを日々実感しています。だからもっと、いろんな挑戦ができるだろうと思っています。企業の役割として、社会的課題にも目を向けています。研究段階なのでお伝えすることはできませんが、一日も早く製品化していきたいです。

田中社会的課題で考えるなら、日本が抱える人口減少にも目を向けなくてはなりません。少子高齢化で住宅着工件数は減少傾向にあります。そういったなかで、寒冷地のライフラインはきっちりと守っていく。さらに、全国にデザイン性の高い水まわり製品を提案し、水栓柱のトップメーカーになることが目標です。最後に自分が退職するまでに2、3個製品化したいと思っています。

清水開発担当としては、他社とどれだけ違うものを開発できるのかという視点を大切にしてきました。そういったなかで、竹村製作所ならではの強みは何だろうと考えてみたら、創業以来守り続けてきた高品質で使う身になって考えるものづくりだと、再認識できました。創業以来大切にしてきた、快適な暮らしを支える便利な、そして魅力あるものづくりをこれからも追求していきたいです。

※1…B社では『ジラーレ』、当社では『アクアマール』と名称を分けて販売するようになりました。 ※2…B社では『アクアルージュ』、当社では『アクアパステル』と名称を分けて販売するようになりました。

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